歯根内部吸収への対応【外傷や炎症に誘発される根っこの吸収】

歯根の内部、外部吸収はなぜ起こるのか?

乳歯(子供の歯)では歯の生え変わりのために歯根が吸収して脱落し永久歯(大人の歯)へと生え変わります。しかし永久歯では歯の根っこは吸収して溶けていくことはありません。永久歯で歯根が溶けると困りますよね、しかし日々臨床を行っていると歯根が不規則に吸収し溶けている所見に遭遇することがあります。

内部外部吸収の原因

なぜ内部外部吸収が起こるかははっきりと分かっていません。主に歯をぶつけたなどの外傷によるものや、矯正治療による歯根への強い力によるもの、漂白などの化学的な作用によるものなどいくつか考えられる。患者さんからしっかりと問診時に聞くことで原因や誘引を特定するようにしています。

何らかの原因で歯根の表面で破骨細胞が作用し歯根の吸収が進むと思われます。

実際の症例

歯根内部吸収

他院で根管治療を行っていたが違和感があるとのことで拝見するようになった方です。

歯の神経が死んでしまって歯の色も黒く変色います。

やはり問診を勧めていくと以前に前歯をぶつけたことがあるとのことでした。

レントゲン所見

歯根内部吸収

レントゲン所見を見てみると根尖部に限局した透過像が認められ、遠心歯根中央部に円形の透過像が認められます。根管と連続しているようにも見え、遠心歯根膜腔も途切れておらず歯根中央部に近接する歯槽骨に透過像は及んでいないように見えます。

歯根内部吸収

CBCT所見でもデンタル所見と同じような診断結果となりましたが3次元的な位置や大きさを詳しく知るのにはCT撮影が有効ですね。

歯根内部吸収

治療を行う上でイメージしやすく歯根だけをCBCTのデータから抜き出してみました。

3Dプリンターでこのまま出力することもできます。最初は意図的再植で一度抜歯して穴をふさごうかとも思ったのですがリスクが有るため今回は根管内部からアプローチしています。

穴の位置が歯根中央を超えて根尖に近くなると器材が届かない、または届いてもきれいに穴を埋められないので難易度が増します。

歯根内部吸収の治療

今回は内部吸収の位置と大きさををCBCTでイメージし根管内より不良肉芽の除去を電気メス等の器材で行いました。

しっかりと出血を止めることができたのでうまく充填することができました。

また根管内部からのアプローチではマイクロスコープが必須になってきます。

根管充填後

歯根中央部の内部吸収している穴はMTAセメントにて埋めています。

MTAセメントはその封鎖性と生体親和性で穿孔時の第一選択としています、今回も患者さんの同意が得られたので使用しています。

はたしてどのくらいの大きさや位置まで塞ぐことができるかはわかりませんが、現在は自覚症状も落ち着いている状態です。

まとめ

外傷の既往があり、根管治療を始めたが仮封のまま1年近く放置してしまったことも状態を複雑化させた要因ではないかと考えています。どの時点で内部吸収が起こり始めたのかは時系列を追っていませんのではっきりとはわかりませんが、何年も前に外傷で歯をぶつける→歯髄壊死が起こる→内部吸収が起こる→根管治療で症状が治まらない。こんな感じで難治化していったのでしょう。

患者さんにはそのことを理解していただき今後も慎重に経過観察していく予定です。

 

 

 

 

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