睡眠時無呼吸症候群の治療と歯科用マウスピースの費用について

患者さん
先生、最近主人が寝ている時にいびきがすごくて呼吸が止まる時があって怖いんです。

歯科医師
う〜ん、それは睡眠時無呼吸症かもしれませんね。よく調べてみましょう。

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸が弱くなる、もしくは停止し体内の酸素濃度が下がり睡眠が障害されることで日中起きている時に極度の眠気や集中力の低下などが起こり日常生活や仕事に支障が出る状態が続き、糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームさらに心血管障害や脳血管障害を引き起こす全身性の疾患です。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)について

睡眠時無呼吸のうち上気道の閉塞が原因であるものを閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と言います。

推定300万人と言われているOSAの罹患率があります、成人男性では3~7%、女性では約2~5%に認められます。男性では40代が約半数を占め女性では閉経後に増加します。

閉塞性睡眠時時無呼吸症候群の原因

OSAの原因は肥満による上気道への脂肪沈着、扁桃肥大、巨舌、小顎症、顎形態異常などがあります。中でも肥満による上気道への脂肪沈着が典型例と言われていますが日本人のOSAの特徴は標準体重でも多く認められます。

ICSD-3による成人のOSAの診断基準

米国睡眠医学会(AASM)では2014年3月にOSAの診断基準が発表されました。

以下AとBを満たすか、あるいはCの条件を満たすものをOSAと定義します。

A.少なくとも以下の1項目の存在

  • 日中の眠気、熟睡感の欠如、倦怠感、不眠症状を訴える
  • 呼吸停止、あえぎ、あるいは窒息感で目覚める
  • ベッドパートナーや他のものによる睡眠中の習慣的ないびきや呼吸停止あるいはその両方の報告
  • 高血圧、気分障害、認知機能障害、冠動脈疾患、脳卒中、うっ血性心不全、心房細動あるいは2型糖尿病と診断されている
B.終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査あるいは検査室外睡眠検査(OCSTの場合)で以下の所見を認める

  • 睡眠1時間(PSGの場合)あたり、あるいは記録1時間(OCSTの場合)あたり5回以上の閉塞性主体の呼吸イベント(閉塞性無呼吸と混合性無呼吸、低呼吸、あるいはRERA)を認める
C.PSGまたはOCSTで以下の所見を認める

  • 睡眠1時間(PSGの場合)あたり、あるいは記録1時間(OCSTの場合)あたり15回以上の閉塞性主体の呼吸イベント(無呼吸、低呼吸、あるいはRERA)を認める。

PSG検査

OSAの確定診断は終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査で行います。このPSG検査は医科にて1泊の検査入院することが必要であります。1泊の入院検査と聞くと検査を受けることへためらわれる方がいますが、無呼吸は睡眠中に生じるため正確に診断するには必要な検査と言えます。

睡眠時無呼吸症候群の症状

  • 大きくて頻回ないびき
  • 呼吸が睡眠中に止まる
  • 昼間の眠気あるいはだるさ
  • 熟睡感がない
  • 不眠
  • 夜間頻尿
  • 集中力の欠如
  • 記憶力の低下
  • 性的欲求の減退
  • イライラする

患者は中年男性に多いため奥様に指摘され病院を受診して気づくことが多いです。また無呼吸は睡眠時に本人は気づかないことが多いのでご家族や奥様に指摘されることも特徴としております。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療には根本治療と対症療法があります。

根本治療

それぞれの原因に対して治療を行なっていきます。肥満が原因であれば体重減量、鼻腔が狭い、扁桃が大きい等には手術を行うこともあります。

対症療法

医科で行う経鼻的持続陽圧呼吸法(CPAP)と歯科で行う口腔内装置(OA)治療や側臥位での睡眠をサポートする睡眠体位指導などがあります。

歯科でいびき・無呼吸防止のマウスピースをつくるには?

歯科でOSAのマウスピース(口腔内装置OA)を作成するにはまず医科での睡眠検査を行い睡眠時無呼吸症の診断が必要になります。

医科からの紹介状と睡眠検査のサマリーなしに歯科で保険診療を行うことはできません。

睡眠時無呼吸症のOA装置とは?

歯科用のマウスピースは口腔内装置(oral appliance)と呼ばれ主に軽度〜中等度のOSAに適用されます。上顎と下顎にOAを装着することで下顎を前方に牽引し沈下した舌根を引き上げ睡眠中の気道を広げいびきや呼吸が止まるのを防止します。

OAとCPAPの特徴

CPAP OA
保険適用 AHI≧20 AHI≧5
治療効果 極めて高い 効かない症例もある
装着感 OAより悪い CPAPより良い
治療継続率 OAより悪い CPAPより良い
携帯性 不便 便利
電源 必要 不要
コスト OAより高価

約5000円/月(3割負担)

CPAPより安価

作成時に約10000円~15000円(3割負担)

歯科用マウスピース(OA)で睡眠時無呼吸症は完治するのでしょうか?

上気道が狭くなる要因として肥満により首の周囲や舌根部に脂肪がついてしまうこと扁桃や口蓋垂などが上気道を閉塞することなどが挙げられます。OAを装着することで下顎を前方に出すことによって上気道が拡大しOSAを改善します。OAはOSAを改善しますが様々な症状を緩和させる対症療法でありOSAを根治させることはできません。

歯科用マウスピース(OA)作成の回数と費用について

睡眠時無呼吸症

歯科の初診時には医療機関からの紹介状、睡眠検査が必要となります。

初診時のOA作製のための印象採得、前方位咬合採得、2回目のOA装着、調整。3回目には上下OA調整、紹介元医療機関にOA効果判定検査の依頼、4回目に上下OA調整、本着といった流れです。

口腔内装置1では義歯用アクリリック樹脂で作成された口腔内装置で3000点

口腔内装置2では①熱可塑性樹脂シート等を歯科技工用成型器により吸引加圧して作成されたもの②作業模型に常温重合レジンを圧接して作成されたもので2000点となっている。

健康保険3割負担では約10000円~15000円程度と考えてください。

歯科用マウスピース(OA)を使うと顎が痛い場合

上下の顎を固定するOAでは下顎を前方に出すほど治療効果を得やすいのですが、顎や歯への負担が大きくなります。痛みが朝起きた時のみで午前中に治る場合はあまり心配はいりません。数日以上経過しても痛みが続く場合はOAの下顎の位置をやや後方へ戻します。それでも痛みが引かない場合は使用を中止します。

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