ぜひ知ってほしいドライマウスの症状と対策について【口腔乾燥症のつらさを解消する方法】

はじめに

なんだか最近、お口の中が乾燥してピリピリするや夜中に口が乾燥して起きてしまう、舌が乾燥してひりひり痛いなどよく相談に受けることがあります。

 

口の中が乾燥すると食事や会話などの日常生活に支障が出るだけではなく、虫歯になりやすかったり歯周病にかかりやすくなります。

患者さん
先生、最近口の中が乾燥して舌がピリピリするんです。

歯科医師
お口の中が乾燥すると虫歯だけではなく歯周病にもなりやすくなってしまいます。正しく対処しましょう。

ドライマウス(口腔乾燥症)とは?

口の中が乾燥するという自覚症状を感じることが多く口腔乾燥症とも呼ばれています。ただ単純に口の中が乾くだけでなくそれに付随していろんな症状が出ます。

歯科医師
心当たりのある方は要注意ですね。

ドライマウスの症状

  • 口の中が乾く
  • 喉が渇く
  • 夜寝ている時に口が乾いて目が覚める
  • 入れ歯に当たりができて痛い
  • 食事の時、味に違和感がある
  • 飲み込みにくい
  • 舌が痛い
  • しゃべりにくい
  • 水分をとりたくなる

唾液について

唾液腺

唾液は唾液腺という外分泌腺によって分泌されます。大唾液腺にはサラサラの唾液をつくる耳下腺とサラサラとネバネバの唾液を作る顎下腺、舌下腺に分かれます。また小唾液腺は口腔内に広く分布し口唇から舌や口蓋に存在しています。

唾液の役割

唾液は食べる、話す、飲むといった人間にとって欠かすことのできない機能を行うにあたってとても重要な役割を担っています。また、細菌やウイルスの侵入を防いだり、虫歯や歯周病からお口の中を守るとても大事な役割を担っています。

1. 粘膜をうるおす作用

口の中への刺激から粘膜を保護する機能のことを言います。唾液の中にはムチンと呼ばれるネバネバしたタンパク質があります。このムチンにより食べ物を包み込み喉や食道、胃を保護し傷から守ります。

2. 消化作用

消化は唾液の役割としてはよく知られた作用ですよね。唾液の中のアミラーゼという酵素によって食べ物に含まれるデンプンを分解して麦芽糖に変え体内に吸収しやすくする役割があります。

3. 抗菌作用

ラクトフェリンやリゾチーム、ラクトペルオキシダーゼなどの抗菌物質によって細菌やウイルスから防御しています。

4.粘膜修復作用

上皮成長因子(EGF)によって傷ついた粘膜を修復する作用があります。EGFは上皮の成長を促進する作用があり傷口の修復に関与しています。傷を舐めればいいよっというのもあながち嘘ではありません。

5.中和作用

緩衝成分によりお口の中のpHを中性にする作用があります。これは細菌が産生した酸を中和したりすることにも作用しています。唾液によって虫歯から歯を守っているんですね。

6.歯の再石灰化作用

歯の無機質のカルシウムとリン酸イオンが溶け出して脱灰されるのが虫歯ですが、初期の虫歯では唾液の中のカルシウムによって再石灰化する作用があります。

ドライマウスの原因

1.シェーグレン症候群

主に目と口に症状の出る自己免疫疾患です。本来白血球の一種であるリンパ球は体外から侵入した細菌やウイルスを攻撃してくれる免疫細胞ですが、シェーグレン症候群では自分のリンパ球が自己組織である外分泌腺を破壊しだす疾患であり、唾液腺と涙腺の分泌低下からドライマウスやドライアイを引き起こします。

2.糖尿病

糖尿病が進行すると唾液腺自体に障害が起こり唾液量が減少します。また、血糖値が高くなると浸透圧のバランスを保つために細胞が多くの水分を必要とし口腔乾燥感が強くなります。

3.脳血管障害による唾液分泌低下

脳梗塞や脳出血などにより口腔機能に麻痺が生じると唾液が減少することがあります。唾液分泌を刺激する神経に麻痺が起こった場合は唾液腺自体の分泌能に影響する場合があります。また唾液腺の機能は正常ではあるが咀嚼筋や機能が衰えることで唾液腺が刺激を受けないことで分泌能力が低下しドライマウスとなることがあります。

4.放射線治療による唾液分泌低下

顎顔面領域の腫瘍などに対する放射線治療の影響が唾液腺組織に及ぼすことで唾液の分泌量が減少することがあります。

放射線量や照射領域によって唾液分泌量の低下は変わり照射による障害が大きい場合は唾液腺機能回復が困難になることがあります。

5.薬の副作用

薬の副作用

薬の副作用として口腔乾燥が出現する薬剤は実はたくさんあります。現在内服されている常用薬のお薬手帳を見てみましょう、副作用として口腔乾燥と記述されている場合があります。

  • 抗うつ薬
  • 向精神薬
  • 抗不安薬
  • 抗パーキンソン薬
  • 抗高血圧薬
  • 抗ヒスタミン薬
  • 利尿薬
  • 抗痙攣薬
  • 鎮痛薬
  • 気管支拡張薬

6.筋力の低下や加齢によるもの

加齢による口腔乾燥

加齢に伴い唾液腺の腺房細胞の萎縮や繊維化などの退行性変化により唾液の分泌量は減少すると言われています。また、加齢による筋肉量の低下をサルコペニアと言います。

筋力低下が起こると唾液腺は筋肉に囲まれているため筋肉からの刺激が少なくなり唾液の分泌量が低下すると言われています。

7.ストレスによるもの

口腔乾燥ストレス

見過ごせない原因にストレス性の口腔乾燥症があります。唾液は交感神経と副交感神経の刺激によって分泌されます。人はストレスにさらされると交感神経が優位になりネバっとした唾液が多くなります。

極度に緊張したり、ストレスがたまると口の中がネバっとしてそれを口腔乾燥感として自覚されている方が多いようです。

睡眠や食事はきちんととれているでしょうか?仕事が忙しかったり気になることがたくさんありすぎると交感神経が優位になりすぎてしまいます。

リラックスした時間を作り規則正しい生活を心がけてみましょう。

8.口呼吸によるもの

口呼吸 鼻呼吸

お口をポカーンと開けたまま呼吸するかたや小さなお子さんを見かけたことがあるでしょうか?

呼吸には鼻呼吸と口呼吸に分けられます。人が呼吸するときに冷たい空気を直接肺に取り込むのはとても危険です。そのためお鼻から吸って一度、副鼻腔であっためられた空気を肺に取り込むことが重要です。

しかし、口呼吸で空気を肺に取り込むことが癖になってしまっている方がいます。当然、口呼吸を行うと口の中も乾燥してしまいます。

歯科医師
割合でいうと加齢によるものとストレスによるものが多いようです。シェーグレン症候群によるものは1割程度でしょうか。

患者さん
う〜んでは、ドライマウスにはどう対処すればいいのかしら?

歯科医師
では次はドライマウスの検査と対処法について見ていきましょう。

ドライマウスの検査

一般的には口が乾燥しているという自覚症状があればドライマウスと診断します。

問診

ドライマウスの診断で欠かせないのが問診です。過去の治療の既往や常用薬の副作用が影響している場合がありますのでそういった場合は医科との連携が重要になってきます。

  1. 放射線治療の既往の有無
  2. 脳血管疾患の既往の有無
  3. シェーグレン症候群の診断
  4. 常用薬の副作用の確認
  5. 糖尿病の合併症の確認
  6. ストレスやうつ病などの確認
  7. 咀嚼筋や加齢によるものの確認

視診

ドライマウスの所見

舌、口唇、口角また口腔粘膜に乾きとして視診で確認できる場合があります。

1.舌

舌の表面は糸状乳頭や茸状乳頭によって覆われています。この舌乳頭が萎縮して舌全体がつるんと平滑に見えるようになります。舌全体の乳頭がまくなった状態を平滑舌と言います。

2.頬粘膜

ドライマウスの症状がひどくなるとお口の中が乾燥するので頬粘膜に発赤といって全体に赤みを帯びた状態になることがあります。

3.口蓋

口蓋も同じように発赤することがあるのですがこちらは主に義歯によるものが多いようです。特に高齢者ではドライマウスの症状が進行することで口腔内の免疫力が下がり口腔カンジダ症が引き起こされる場合があります。口腔カンジダ症では義歯に一致して起こっていることが多いことでわかります。

4.口角

お口の中が乾燥すると口角にびらんができる場合があります。

5.虫歯

お口の中が乾燥している方の歯をみてみるとかなり虫歯が多発している方が多いです。唾液の分泌が低下することでお口の中の免疫力が下がり虫歯になりやすくなってしまいます。特に歯ぐきが下がった歯根の表面に根面う蝕として現れることが多いです。

唾液分泌量測定

1.安静時唾液検査

患者さんが座ったまま咀嚼など行わず安静な状態で15分間唾液を紙コップに採取します。コップに溜まった唾液が何mlだったかを計測して唾液分泌量を診断します。シェーグレン症候群の診断基準に1.5ml/15分間以下の場合に陽性という基準があります。

2.刺激唾液検査

①ガムテスト

患者さんに10分間ガムを噛んでもらい唾液を採取して唾液量を測定します。厚生労働省のシェーグレン症候群の診断基準では10ml/10分以下が唾液分泌量減少とされています。

②サクソンテスト

患者さんにガーゼを噛んでもらいそのガーゼが吸収した唾液量を測定する方法です。2分間ガーゼを噛んでもらい噛んだ後のガーゼの重量を測って唾液分泌量を測定します。厚生労働省のシェーグレン症候群の診断基準では2g/2分以下が唾液分泌量低下とされています。

 

ドライマウスの対処法

歯科医師
ドライマウスの対処には診断がとても重要になります。正しく診断した上で適切な対処法を考えましょう。

原因療法

ドライマウスの原因には全身疾患と大いに関係している場合があります。そのため医科との連携が重要となります。場合によっては常用しているお薬の変更を依頼したりすることもありますし、糖尿病が疑われる場合は糖尿病の治療を行ってもらい改善することもあります。

対症療法

医薬品として登録されているのは人口唾液サリベートのみだといえます

それ以外は市販されている口腔ケア用品で口腔化粧品や食品に分類されています。

⑴保湿剤配合の洗口液

口腔保湿液

原液で約15mL(大さじ1杯位)を口に含み、口内全体にいきわたらせるように30秒ほどよくすすぎ、吐き出してください。1日3-5回の使用をおすすめします。水で口をすすぐ必要はありません。

洗口液をスプレーに入れてスプレータイプとして使用してもいいかもしれません。

⑵保湿ジェル

保湿ジェル

 

保湿ジェル

食後と寝る前にお口の中にまんべんなく行き渡らせます。

保湿ジェルは口腔内に止まる時間が比較的長いので保持時間は洗口液やスプレーに比べると続きます。義歯をお使いの方はジェルタイプを義歯の内側へ塗ることでさらに長時間効果を持続させることができます。

⑶保湿スプレー

保湿スプレー

 

保湿スプレー

スプレータイプは洗口液でうがいできない状況などで短時間に手軽に行うことができるのが特徴です。

喉が渇いたと感じる時に水を飲む変わりに使うのも良いでしょう。レモン味などの味がついているほうが味覚が刺激され唾液分泌を促進しますので良いでしょう。

唾液腺マッサージ

大唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺があります。まずはアゴのえらの部分にある耳下腺をマッサージしてみることから始めましょう。お顔の上から両手で円を描くように優しくマッサージするだけでも唾液の分泌が促進されます。

まとめ

口腔乾燥症は全身疾患によるものであったり常用薬の副作用として起こったりするのでその原因に気付きにくい側面があります。口腔ケアと同時に唾液腺マッサージや義歯の不適合の確認、保湿ジェルの使い方の確認もしています。虫歯や歯周病を進行させるリスクファクターでもありますので気になったらかかりつけの歯科医院で相談されることをお勧めします。

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