はじめに
歯と歯の間は虫歯の好発部位のため日々臨床では出くわすことの多い部位です。今日は日頃から臨床でどういった点を考慮して歯科医師が歯と歯の間の虫歯を診査診断し、治療方法を考慮するのかを考えていこうと思います。
歯と歯の間の虫歯の見つけ方
視診、触診
お口の中を直接目で見て触って虫歯の有無を診断する方法です。う窩(虫歯による穴)の形成がある場合は視診や触診が有効です。初診時に口腔内診査で見つかるケースもありますし、定期検診時に虫歯の再発として見つかるケースもあります。
ただ、視診といっても裸眼で診査する場合や2〜10倍の拡大鏡で診査する場合やマイクロスコープで診査する場合など多岐に渡ります。拡大下での診査診断がより優れた結果を出すと考えています。
デンタルレントゲン撮影
大きな虫歯は視診で見つかることもありますが比較的小さなコンタクト直下に隠れている虫歯はレントゲン撮影で見つかることがあります。
透照診
光を歯に照射して歯の内部を透過した光で虫歯の有無を見つける方法です。
フロスでのひっかかり
こちらも古典的な方法ですがフロスの引っ掛かりで見つける方法です。自分で見つけることができるのでフロスがほつれたりひっかかったりする場合は一度歯科医院で見てもらった方が良いでしょう。
治療方法
臼歯におけるコンポジットレジン修復の有用性
奥歯の歯と歯の間の虫歯の治療方法にはいくつかの選択肢があります。健康保険内の治療法ではメタルインレーによる修復(いわゆる銀歯の詰め物)とコンポジットレジンによる直接、間接レジン修復があります。健康保険外ではセラミックによるインレー修復、コンポジットレジンによるレジン修復やゴールドインレー等多岐に渡ります。
今回は直接コンポジットレジン修復とインレー修復に焦点を当てて考察してみたいと思います。
臼歯隣接面(2級窩洞)の修復法として、直接コンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績に違いはあるか?
臼歯部隣接面(歯と歯の間)に対するコンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績に有意な差はないとされています。しかし、コンポジットレジン修復はMIの理念に基づいてう蝕除去を行うため、健全歯質を可及的に保存し審美的な修復ができる。よって確実な接着修復とコンポジットレジンの充填操作が可能であれば、臼歯隣接面(2級窩洞)に対して直接コンポジットレジン修復を行うことが推奨されるとあります。
臼歯部においてコンポジットレジン修復とメタルインレー修復の臨床成績を直接比較した論文はかなり少ないようです。
いくつかの後ろ向きの調査では臼歯部におけるコンポジットレジン修復と鋳造修復との生存率に有意差は無いと報告されています。
その治療方法が長持ちするかどうか(生存期間の長さ)に影響する因子として臼歯部の咬合接触状態の不良な患者では経過不良であり、咬合関係が臨床成績に影響するとされています。
【う蝕治療ガイドラインより】
ただ、かみ合わせ(歯の残り方)によって壊れるまでの期間が変わってくるようです。
かみ合わせ(歯の残り方)Eichner(アイヒナー)の分類
Eichner(アイヒナー)の分類とはEichner K(1955)によって発表された分類で欠損歯列だけでなく健全歯列から無歯顎に至る全ての歯列の関係を分類の対象にしている。分類の基本となるのは残存歯で咬合が支持されている部位の数であり、機能を重視した補綴学的な立場から発表された分類法である。
メタルインレー修復の欠点
MIの理念に基づいたう蝕治療の観点からコンポジットレジン修復とメタルインレー修復を考えた場合、メタルインレー修復においては虫歯除去した後の窩洞形成に伴う健全歯質の削除量が大きくなることが欠点としてあげられる。
メタルインレー修復はコンポジットレジンによる直接修復に比べて形を整えるのに必要とされている窩洞形態という考え方があります。そのためどうしても接着修復のコンポジットレジンよりも歯を削る量や面積が大きくなってしまうのです。
歯質の削除量が増えれば術後に歯髄への症状が出てしまったりすることもあります。
臼歯隣接面(2級窩洞)の形態とコンポジットレジン修復の難易度
歯と歯の間にある虫歯をコンポジットレジンで直接修復するのはとても難しいとされています。
虫歯の大きさや面積また歯と歯の間の接触しているコンタクトポイントが残っているかどうかなどで修復の難易度が変わってきます。
現在の私の治療選択
まずは以上のように適切な診査診断が重要になります。
虫歯を除去した後の窩洞の面積が小さいものやコンタクトが保存されているケースでは第一選択でコンポジットレジンによる直接修復を選択しています。
しかし、虫歯除去後の面積が1/2 をこえるものや機能咬頭を含むもの、咬合力の強い方や咬合支持域の少ない方ではインレー修復を第一選択にしています。
どちらの修復方法でも事前に利点欠点をよく説明しできるだけ長持ちできるように歯科医師とよく相談することが重要だと思います。